2016年4月23日土曜日

語学教師が語学を習うと・・・②

1か月スペイン語を習ってみて、文字通り学習者視点で語学学習やクラス活動を見ることができ、本当に学びが多いです。
今回の先生&授業からも、たくさんの学びと気づきがありましたので、記録しておきます。
(関連記事→語学教師が語学を習うと・・・①

まず、クラスに通い始めたころの印象にも書きましたが、(詳しくはこちら)私はこのクラスにとても満足していて、それは最後までずっと変わりませんでした。
クラスを楽しむには、自分にちょっと余裕があるぐらいの方がいいような気がします。

それから細かい点で気づいたこと

①宿題の量とFB
学習者は語学のみを勉強しているわけではなく、ほかにもいろいろやっています。仕事、子育て、家事、学生であっても他の教科や習い事など。ですから、宿題が多すぎるとズバリ負担です。多いなら提出までに時間があるといいです。
それから、宿題をやっていてちょっと自分の答えに自信がなかったり分からなかったり疑問があったとき、「答え合わせのときに先生に聞こう」と思いました。だから遅刻して答え合わせの時間にいなかったりすると質問のチャンスがふいになってしまいますし、分かりやすい説明で理解が深まりました。なので、答え合わせや宿題のチェックの時間は学習者の疑問解消のためにも必要だと思いました。特に自分で答え合わせができる宿題とかですと、その時間を取らない先生も見かけますが、そんなときにも一言質問があるかどうかだけでも聞くといいなと思いました。

②教師の存在感
これはない方がいいです。今回のクラスの先生は、基本的な説明をした後はひたすら活動の時間を取ってくれました。これぞ学習者中心、先生は脇役。活動の中で疑問が出てきたときなど必要があれば先生を呼びましたし、見まわって言い方がおかしい時などはその場で直してくれました。「ああ、そういうのか」と思いましたね。本当はここですかさずメモを取っておくのがいいです。話しているときはそれに夢中であとで忘れて「なんて言ったっけ?」となることもありました。新しい単語なら板書してもらうとメモしやすいし、間違った表記で書くこともないです。

③ノートテイキングの時間
これはあったほうがいいです。今はPPTを使って授業されている先生も多いと思いますが、それが教科書になかったり、上手にまとめてあるものですと、学習者としてはそれをコピーしておきたくなります。板書の場合も同じです。写真をとる学習者もいますが、それでもいいので、説明が終わったからといってさっさと次に進まずにちょっと時間をとるといいです。結局そこがきちんと理解されないままですと、その後の活動もうまくいかないので。

④テスト勉強
やっぱり学習者としては合格したいので多少なりとも勉強します。普段の宿題や学校で習ったことの総復習です。どの程度やるかは個人差があると思いますが、これで理解が深まるのは確実です。意外ですが、私個人としては、テスト直前の全体に向けての復習はそんなに必要じゃないかも。勉強していればすでに自分の中で落ちているので。それよりは復習の時間を取ってくれた方が、個人個人がもう一度チェックしたいところを見ることができるので、こちらの方が有効です。
それから、よく「緊張した」という学習者の声を聞くことがあったのですが、これは本当にそうだと思いました。私も緊張しましたから(^^;)課テストですらそうなのですから、これが学校の中間・期末とかですとなおさらだと思います。テスト前は特に、学習者は緊張状態にありますので、教師の声掛け・発言の内容には気をつけなきゃな、と思いました。

⑤覚えることの大変さ
単語を覚えたり活用を覚えたり、地味な作業が語学の基本。でもこれがなかなか覚えられなかったりして、学習者は自分で自分をダメ人間呼ばわりしてしまうことも。口がうまく回らなくて、みじめな思いをすることも。例えそれが自分の勉強不足であったとしても、必死に頑張っているのに覚えが悪い(ワーキングメモリの問題)のだとしても、クラスで自分より上手にできる人を見ると、なんとも情けない気分になり自信を失ってしまいます。そこで反省して真面目にがんばるか、そのまま「どうせできない」となげやりになってしまうかは個人差がありますが、できないことを一番わかっているのは学習者本人です。
そして一度覚えても、やっぱり時間がたつと忘れてしまいます。それはもう情けなくなるくらい。何度も何度も同じものを目にすること、そして使うことでやっと記憶に定着します。個人差もありますが、それには長い時間がかかります。使い続けること、何度も触れること、つまり反復練習がとても大切で、結局は近道。

⑥知っていることと使えることは違う(脳内処理)
知っているはずなのに会話する時とっさに出てきません。ある程度語彙や文法知識があるとなおさらです。どれを使っていいのか、とっさに判断できないことがままあります。そこに気を取られているとほかのところで抜けがあったり。これは本当に違う能力です。言語は変形するパズル。このスピードを速めるためには、やっぱり「慣れ」、つまり、何度も練習するしかありません。脳の引き出しからさっと取り出して形を変えて送り出す一連の脳内処理の速度を速める、パイプを太くする練習が必要。とにかく口を速く動かす練習も必要。
先生は口を早く動かす練習として、「20秒でどこまで言えるか」という練習を取り入れていました。発音や正確さは一切気にせず、書いてある文章をできるだけ速く音読するのです。1回目より2回目、2回目より3回目、少しですが前回より長く文章が言えるようになっていました。これは日本語の授業でも使えそう。

⑦文字と音のつながり
私の場合、自分でも他の人でも音読しているときはひたすら字を追って内容は頭に入りません。黙読して初めて内容がわかります。もちろん音読と同時に理解できる人もいますが、私はそれが苦手なタイプのようです。音読と黙読、それぞれ使っている脳が違うということ。
聴解も同じ。音にすると分からなくても、文字で読めば「ああ~」ということも。発表の時に文字と音が合っていれば分かりやすかったですが、違うと混乱しました。文字と音をつなげて、一気に処理できる情報を増やしたいものです。

⑧先生の苦労は見えない
これは学習者視点ではまったく見えないし、重要でもありません、残念ながら。学習者は出てきたものだけを見ていますし、授業が楽しくて役に立てばなんでもいいです。テストの内容も「ふーん」ぐらいなものですし、できれば易しい方がいい(笑)
以前働いていた職場で、大切な試験の前に、成績下位の学習者を心配して苦労して作成した自作課題をあげたのにそれをやってこなかったことがあります。私が上司に報告して「こっちはこんなに苦労して、こんなに心配してるのに」と言ったとき、上司に「それは学習者には関係ないことだ」と言われたことがありますが、今回、本当にそうだと思いました。学習者からしてみれば、また宿題が増えてめんどうくさい、ぐらいのものでしかなかったのです。
今回も先生は曲から教材を作ったり、ビデオから教材を作ったり、もちろんいろんな資料をくれたりしました。同じ教師目線で見れば、文法の練習に適したものを探すのから始まって、文字おこししたりこれだけの教材を作ったりするのは相当大変だったろうな、とその苦労が分かりますが、学習者目線でみれば、教科書もそれも同じ「教材」でしかありません。ま、教科書をひたすら読んで答えるよりは音楽やビデオの方がちょっと楽しいって思うぐらい(笑)。
だから、授業準備や教材作成、テスト準備にいくら時間をかけても、いくらこだわって労力をかけても、会議で度重なる話し合いの末にようやく決まったことでも、学習者に「その苦労を分かって!」というのは、実は教師のエゴなのかもしれません。


随分長くなってしまいましたが、学習者の立場になってみて、本当に多くの気づきがありました。
私個人の語学能力の特徴もずいぶんわかりましたし、個人個人の能力が本当に違うこと、学習するスピードも、得意なことも違うことがよくわかりました。
そして先生の役割やふるまいも、学習者目線から「こうだといいな」というものが見えました。あくまで私が「いいな」と思う教師像でしかないのですが、よりよくなるための大きいヒントがもらえました。
これからも「学習者目線で授業を見れる教師」を目指してがんばります。





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2 件のコメント:

  1. 学習者視点に立つことは大切ですよねー。たまに講義や会議で2~3時間座っていることがあると、それだけでも「学生は大変だな」なんて思います。
    「教師の苦労は見えない」、自分の労力の見返りを学習者に求めてはいけないんですね。つい「こんなにやってるのに」とは言いたくなるけど。労力の見返りとしては給与をもらっているわけですし、学習者の頑張りはプレゼントのようなもの、でしょうか。頑張っている学生を見ると、本当に癒されるし、私も頑張ろうと思います。
    「教師の苦労は見えない」けれど、やはり伝わるものはあると思います。いい授業はてきとーにはできないですもんね。

    あー、会っていろいろ話したい!
    そろそろ一時帰国?

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    1. コメントありがとうございます。やっぱりここに着目しましたか(笑)。実はこの先生の後に違う先生に習ったのですが、そこではっきり授業に対する姿勢の違いがわかりました。「苦労がわかる」というよりは「すごくいろいろ考えて準備してくれていたんだな」という感じ。やっぱり学習者にも先生の頑張りは伝わるものですね。だからあきらめないで、いい授業のためにがんばりましょう。最近いろいろあって、ブログを更新できていないのですが、こうやってコメントもらえると励みになります。ありがとう。そうそう、そろそろ帰国の予定なので、また別でおしらせしますね(^^)

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